モニターがない場所でも複数画面で作業できないだろうか。そんな発想から、VRゴーグルで仮想マルチモニター環境を構築する「Immersed」というアプリに興味を持ちました。

Immersed Visor Founder’s EditionというVRメガネを予約注文していたので、それを待っていたのですが、発売される気配がありません。そんな折、Meta Quest 3sがセールで4万円を切っていたため、試しに購入してみることにしました。
目次
VR作業環境への期待とImmersed
在宅勤務やコワーキングスペースでの作業の際、モニターを持ち運ぶのは現実的ではありません。しかし、ノートパソコンの小さな画面だけでは作業効率が落ちてしまいます。モニターを増やすにも、物理的なスペースが必要です。
そこで注目したのが、VRゴーグルで仮想的に複数のモニターを表示できる「Immersed」です。
VRゴーグルを装着することで、目の前の空間に最大5つの仮想モニターを配置でき、理論上はどこにいても自宅と同じマルチモニター環境を再現できます。
快適性を追求したセットアップ
Meta Quest 3sをそのまま使うのではなく、長時間の作業に耐えられるよう、いくつかのアクセサリーを追加しました。
度入りレンズ
まず、ROOX Onlineで度入りのレンズを購入しました。これにより、裸眼でVRゴーグルを装着できるようになり、眼鏡との干渉による不快感が完全になくなりました。度入りレンズは、目が悪い私にとって、VRゴーグルを長時間使用する上で必須のアイテムだと感じています。
カウンターウェイト
次に、カウンターウェイト代わりになるKIWI バッテリーヘッドストラップを取り付けました。Meta Quest 3sは前面に重量が集中しているため、標準のストラップでは顔の前面に圧力がかかり、長時間の使用は困難です。バッテリー付きのヘッドストラップを後頭部に配置することで、重量バランスが改善され、装着感が大幅に向上しました。
フェイスカバー
さらに、フェイスカバーもAMVR Facial Interfaceに交換しています。標準のものよりも肌触りが良く、通気性も向上するため、長時間装着時の快適性が高まります。
これらのアクセサリーを装着した結果、装着感はかなり改善されましたが、それでも重量がそこそこあるため、長時間作業を続けると首に負担がかかってきます。
フレネルレンズの視野と解像度の課題

Meta Quest 3sはコストを抑えるため、フレネルレンズを採用しています。上位モデルのMeta Quest 3がパンケーキレンズを採用しているのとは対照的です。
実際に使用してみると、確かに視野は狭いと感じます。ただ、使い始めてしばらくすると慣れてくるため、視野の狭さ自体はそれほど問題になりませんでした。
本当の課題は解像度です。
税理士業務では、細かい文字・数字を読む作業が多いのですが、Meta Quest 3sの解像度では十分とは言えません。作業ができなくはないものの、リアルのモニターには明らかに及びません。
実際、Meta Quest 3s + Immersedで作業をした後、リアルなモニターを見ると、その解像度の高さに改めて驚かされます。
重要なのは、これはImmersedアプリケーションの解像度が足りないのではなく、Meta Quest 3sというハードウェアの解像度が足りないということです。Meta Quest 3sは片目あたり1832 x 1920ピクセルで、PPD(視野角1度あたりのピクセル数)は約20程度です。PPDは、VRヘッドセットの実質的な鮮明度を示す指標で、この数値が高いほど、より詳細でクリアな映像を体験できます。
一般的に、快適に文字を読むには約30 PPD以上が必要とされており、この差が作業効率に影響しています。参考までに、一般的な4Kモニターを適切な距離で見た場合のPPDは約60〜70程度ですから、解像度不足であるかがわかります。
M2 MacBook Airとの接続環境
私はM2 MacBook AirにLinkケーブルで有線接続して使用しています。Wi-Fiではなく有線接続を選んだのは、通信の安定性を重視したためです。無線接続の場合、周囲のWi-Fi環境によっては遅延や接続の不安定さが発生する可能性があります。
ただし、Immersedで4画面以上を表示させると、動作が重くなってしまいます。
有線接続でも重いということは、これは通信速度の問題ではなく、Mac側の処理能力の問題だと考えられます。快適に使用するのであれば、3画面程度に抑える必要がありますが、それでも、ノートパソコンの1画面と比較すれば大幅な生産性向上が期待できます。
Immersedの機能と集中環境としての価値
Immersedには興味深い機能がいくつかあります。

作業空間として「プライベートルーム」(自分専用)と「パブリックルーム」(Immersed利用者が誰でも入れるコワーキングスペース的な空間)を選択できます。

表示モードとして、完全に仮想空間の中で作業ができる「VRモード」と、リアルな画面にVR空間を重ねることができる「パススルーモード」を切り替えることができます。
私のお気に入りは、コテージのような所と、宇宙空間です。
特に注目したのは、VRモードで完全にリアルから切り離された空間で作業すると、余計なものに気を取られないため、高い集中力を維持できるという点です。これは予想外の発見でした。
Immersedは、これを「Noise-canceling for your eyes.」と言っています。
自宅で作業していると、つい目に入る雑多なものに気が散ってしまうことがあります。スマートフォンの通知、散らかった机、窓の外の景色など、注意を引くものは数多くあります。しかし、VRモードではそれらが完全に視界から消え、純粋に作業だけに集中できます。これは、集中力を高めたい作業において非常に有効だと感じました。
結論:リアルモニターにはまだ勝てない
Meta Quest 3s + Immersedは、仕事ができなくはありません。実際、メールの返信や資料作成、Webブラウジングなど、基本的な業務はこなせます。しかし、リアルなモニターがあったほうが効率は良いというのが率直な結論です。
特に、細かい文字を扱う税理士業務においては、現状のVRゴーグルの解像度では実用性に限界があります。数字を確認したり、文章を読んだりする際には、やはり高解像度のリアルモニターには勝てません。目も疲れやすく、長時間の精密作業には向いていないと感じました。
現時点では、「できなくはないが、積極的には選ばない」という感じです。
技術の進化と今後の期待
ただし、これが将来的にVRゴーグルで4K表示ができるようになり、解像度問題が解消されれば、状況は大きく変わるでしょう。
技術の進化は想像以上に速いものです。5年前には考えられなかったような高解像度ディスプレイが、今では当たり前のように使われています。VR技術も同様に、急速な進化を遂げています。あと数年もすれば、VR空間での業務が当たり前になる時代が来るかもしれません。
Meta Quest 3s + Immersedは、現状の限界を知ると同時に、近い将来の可能性を感じさせてくれました。Immersed Visorが早く発売されることを心待ちにしています。

