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経営者は簿記を学ぶべき?

経営の視点
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昨年に引き続き、市川法人会さんで簿記講座の講師として登壇しました。6月の平日日中の講義でしたが、全12回、法人会さんの会議室が満席になる大盛況となり、ありがとうございました。

途中回を都合で欠席されるかたから、「Zoomでネット受講できないか」というお問い合わせも頂きまして、そこまで興味を持って受講していただけるというのは、講師としてとても嬉しく思いました。

受講された皆様がこれから実務に携わる際に、「そういえばそんな事聞いたな」と思い出して頂けたら嬉しいです。

簿記講座の概要

この講座は、簿記オタクの1人として、単に簿記検定の問題が解けるようになるための講座ではなく、「簿記って面白い!」と思って頂けるような講座を目指しました。

市川法人会さんからも、6月の講座は「日商簿記3級合格のガチ講座ではなくて良い」という後押しを頂きまして、簿記の知識が無い方向けに、簿記の面白さを知ってもらえるよう、カリキュラムを組みました。

実務上の取り扱いや事例と絡めて、日商簿記3級の試験範囲を超える部分にも触れ、テキストの中の仮想空間ではなく、自分の会社のこととして学べるようにお話しました。今回は、経営者のかたが多い印象でしたので、特に実務上の事例を積極的に取り上げました。

簿記の面白さを感じられるようになれば、経理事務の仕事もグッと面白くなりますし、経営者も少しずつ数値を見ながら経営ができるようになっていきます。簿記でも特に日商簿記3級は、実務でよく出てくる面白い項目が満載です。

というわけで、1日2時間、全12回、私が簿記や実務上の事例について漫才のように喋りまくって、授業終了後に質問を受け付ける、という講義形式になりました。

使用テキスト

テキストには、TACの「スッキリわかる 日商簿記3級」を使用しました。

TACと大原、両方の日商簿記3級のテキストを読み比べまして、ストーリー仕立ての読み物としても面白いテキストで、簿記に初めて触れる人には、この本が一番だと思います。

クロキチくんが一念発起して、個人事業主として雑貨店を開業し、商品仕入・販売を行い、規模が大きくなり従業員を雇用し、法人成りして株式会社となり、法人税・消費税の確定申告を行い、納税するまでのストーリーに沿って、簿記の知識を学んでいきます。

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経営者は簿記を学ぶべき?

起業されたばかりのかたから「税理士にレシート丸投げしているのですが、簿記の勉強をする必要があるのでしょうか?」という質問があり、授業終了後、30分ほど簿記の重要性についてお話させて頂きました。

経営者の頭の中には、いまどのくらい売上があるのか、どのくらい経費がかかっているのかなど、おおよそのイメージが入っていると思います。その経営者の「勘ピュータ」の精度を高め、現実の数値と近づけていく事が、経営者として大切な資質です。

「なんとなく儲かっているような気がする」ではなく、「毎月100万円のキャッシュインがある、キャッシュアウトは70万円、残り30万円キャッシュが純増する見込みなので、いま新規出店で5年500万円で証書借り入れしても返済可能」といった数値が「勘ピュータ」に入っていれば、漠然とした恐怖に囚われることなく、投資リスクを精度高く取ることができます。

そのためには、会社の財務数値がどのように作られているのか、仕組みを知る事が必要です。日々の取引で発生するレシートから、どのように毎月の試算表が作成され、財務諸表(貸借対照表・損益計算書等)が作成されるのかを知る事です。まさに、ここが簿記で学習する分野になります。

少し簿記がわかってくると、日々の経営管理に数字を使いたくなります。たとえば、製品製造の職人の給与と本社事務員の給与を同じ「給与」勘定に合算してしまうと、製造セクションと共用費セクションで損益管理ができません。こういった、分析に必要なデータ記録方法を指示して、必要なデータを取り、経営に活かすのは、経営者の役目です。

簿記は、大昔、楔形文字でワイン等の配給を記録するための帳簿として発明され、その後長い年月をかけて現在の複式簿記になりました。簿記は、人類が数千年間試行錯誤した集大成、ベストプラクティスを、そのまま学ぶことができる、商人の叡智の結晶です。

江戸時代の「勘定奉行」から帳簿を取り仕切る「番頭」、今の日本の経済産業省など、帳簿を握っている人は強力な力を持ちます。勘定奉行の「勘定」は、簿記の「勘定科目」の「勘定」ですね。

やはり、簿記を知っている人は強いです。

簿記は楽し。

簿記の知識があると、街中を歩きながら「このお店は、私の知らない何らかの強みを持っている気がする」「このお店の月次試算表はこんな感じかな」など、色々な事を考える事ができ、いいトレーニングになります。

これからの時代、一つのビジネスだけで、一つの会社を大きくする事に全集中する時代ではなくなりつつあると考えています。開業から廃業までのサイクルも短くなってきています。

経営者が共通の武器(経営能力)を以て様々なビジネスを手掛け、激動の時代を駆け抜ける、そのスキルの根底に、数値を使う簿記の能力があるのだと思います。

簿記講座チラシ

開催した簿記講座のチラシを記念に貼っておきます。

Planどこを改善すれば良いかが見える
Doどう手を打てば良いかが見える
Check打った手の成果が見える
Actionさらに改善策が打てる

経営の視点
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