クラウドサービスを駆使して、スタートアップ企業のバックオフィス標準化をサポートします。

電子帳簿保存法 スキャナ保存のススメ

業務カイゼン
この記事は約8分で読めます。
この記事の趣旨

電帳法(電子帳簿保存法)により、受け取った紙の領収書・レシートを所定の方法でスキャン・データ保存することで、紙の原本を即・破棄することができるようになりました。領収書は法人であれば10年保存する必要がありますので、物理的な紙の保存が不要になるスキャナ保存にはメリットがあります。

ここでは、紙で受け取った領収書を、電帳法に沿ってスキャナ保存するための条件・方法をご紹介します。

電帳法のおさらい

電帳法対応には、

  1. 電子帳簿等保存(任意)
  2. スキャナ保存(任意)
  3. 電子取引データ保存(義務)

の3つがあります。

詳しくは、以前書いた記事を御覧ください。

今回は、2.スキャナ保存を取り扱います。

スキャナ保存のメリット

スキャナ保存対応のメリットは、何と言っても、電子データを保存することで、紙の原本を破棄できるところでしょう。紙の書類のファイリング作業や保存スペースが不要になるという事は、それだけコストダウンに繋がります。

私のように賃貸オフィスで事業を行っている場合、資料を物理保存するスペースにも家賃が発生していますので、オフィスにある物理的なモノを減らす事がコストダウンに直結します

スキャナ保存の将来

電子インボイス、というキーワードを聞いたことがあるでしょうか。

今、日本は電子インボイスを普及させようとしています。紙と電子データの混在環境が日本の生産性を下げているのは間違いありません。そこで、デジタル庁が旗振りをして、国際規格に基づく電子インボイスの導入を推進しています。

電子インボイスは、消費税のインボイス制度に伴う付属物のように思われていますが、実はそうではありません。電子インボイスの目的はもっと広く、

  • 取引の透明性の確保
  • ミスや不正の防止
  • 正確・効率的な経理処理
  • 複雑な税額計算への対応

など、商取引から紙を無くし、国内の産業を効率化する事にあります。

私は、5〜6年後には、全体の7割〜8割程度の取引が電子インボイスで行われるようになると予測しています。全ての取引で発生する請求書・領収書等を、Peppolという国際規格を使って電子データのままやりとりするようになる未来。会社の経理ソフトに、直接取引先からデータが取り込まれる未来。そんなワクワクする未来が待っています。

その時に備え、今からスキャナ保存の体制を整え、紙のデータをスキャン・会計ソフトに取り込んで、それを基に帳簿を作成する取り組みを始める事は、競合相手に一歩先んじる事にも繋がると思います。

電子インボイス普及後、「紙の証憑をスキャンしてデジタルデータにする」作業は不要になります。ただし、デジタルデータを基に経理処理を行う経理の流れは、そのままメインストリームになります

とかくスキャンする手間と保存する手間に目が行きがちですが、目指すところはそこではなく、商売の流れがガラッとDXされる時に、一番乗りするため。そう思うと、スキャナ保存をやってみるのも、悪くないと思いませんか。

スポンサーリンク

スキャナ保存の要件

領収書をスキャナ保存するためには、いくつか要件を満たす必要があります。

要件解説
保存期限① 書類を作成・受領してからおおむね7営業日以内にスキャナ保存すること
② スキャナ保存に関する事務処理規程を定めている場合、2ヶ月+7営業日以内にスキャナ保存すること
読み取り解像度解像度200dpi以上で読み取ること
カラー24ビットカラーで読み取ること
タイムスタンプタイムスタンプを付与すること
ただし、保存期間内にスキャナ保存したことが確認できる場合には、タイムスタンプ省略可
バージョン管理訂正・削除の事実やその内容を確認することができるシステムを使用すること
もしくは、訂正・削除を行うことができないシステムを使用すること
帳簿との相互関連性スキャナ保存データと、それを基に作成した帳簿との相互関連性を確認できるようにすること
見読可能性14インチ以上のモニター「及び」カラープリンター「並びに」操作説明書を備え付けること
システム概要書等の備え付けスキャナ保存するシステムの操作説明・スキャナ保存する手順・担当部署等を明らかにした書類を備え付けること
検索機能スキャナ保存したデータにつき、次の要件による検索ができること
① 取引年月日
② 取引金額
③ 取引先
④ 日付または金額につき、範囲指定して検索できること
⑤ 任意の組み合わせで検索できること

スキャナ保存の よくある勘違い その1

スキャナ保存は、PCにスキャナを繋いで、スキャンしたデータをPCに保存すれば良い・・・というわけではありません。上記の要件をよく調べると、そう単純ではない事がわかります。

特にタイムスタンプの要件が重要になります。

タイムスタンプを省略するには、保存期間内にスキャナ保存したことが確認できる、つまり、領収書等をスキャンし、保存した日が客観的に正しいと証明できる(=タイムスタンプと同等の機能がある)事が必要です。

PCのローカルに保存しようとする場合、PCの時計が正確であることが必要です。NTPで定期的に同期しているから大丈夫とかそういう事ではなく、第三者から見て正しい事が客観的に担保されていたほうが良いでしょう。

PCの時計は容易に設定変更・偽装が可能です。ですので、無策のままローカルに保存すると、タイムスタンプの省略要件に該当しなくなり、スキャナ保存したデータを国税書類と認められない場合があり得ます。そして、税務署から既に破棄してしまった紙の証憑を出せと言われる・・・なんて、最悪のシナリオが無いとは言えません。

スキャンしたデータを保存するのは、クラウドストレージ等、他人が時刻を保証してくれるものを使うのが良いと思います。

スキャナ保存の よくある勘違い その2

こういう経理フローがあった場合はどうでしょう。

① 経理担当者が電子取引データで送られた領収書(※デジタル保存必須)を印刷し、上長に回覧する
② 上長は印刷された紙の領収書に認印を押して、経理担当者に戻す
③ 経理担当者が紙の領収書をスキャンしてスキャナ保存する

この場合、③のスキャナ保存は認められるのでしょうか。

国税庁の資料を見ると、この場合、①の電子取引データをデジタル保存すべきであり、一旦紙に印刷した③の領収書はスキャナ保存が認められないとあります。

なんでもスキャンすれば良い、というわけでは無いのですね。

freee会計を使用したスキャナ保存対応

私はfreee認定アドバイザーなので、ここからはfreeeの電帳法対応の宣伝をします(笑)

freee会計を使用している人は、freee会計のファイルボックス機能を使用することで、そのまま経理と統合した形で電帳法対応が可能です。そもそも領収書・請求書等を保存するのは経理処理を行うためであり、その先には、会計データを経営に役立てるという目的があります。freee会計を使用している人は、freee会計で電子帳簿保存対応をするのが最も効率的な方法だと思います。

freee会計は、義務化される電子取引データ保存だけでなく、電子帳簿等保存・スキャナ保存についてもフル対応しています。

freee会計で電帳法対応のスキャナ保存を行う作業は、下記のような手順になります。

もう一つ、freee会計の領収書データ化サービスを使う、という画期的な方法がありますが、そちらはまた別の機会に記事を書こうと思います。

① 紙の領収書・請求書等をScanSnapでスキャン

ScanSnap Cloud対応のScanSnapで、スキャンした領収書をScanSnapから直接freee会計のファイルボックスに転送する事ができます。

ScanSnap Cloudを利用するには、iX1600 / iX1500 / iX1300 / iX500 / iX100のいずれかが必要です(2024年1月現在)。

freee会計のファイルボックスに転送された領収書・請求書は、自動的にOCR処理が行われ、取引日付・取引先・取引金額が自動認識されます。私の経験上、手書きの居酒屋さんの領収書も、かなりの精度で日付と金額が認識できます。

② 現金払いの領収書・請求書について、freee会計上で取引登録

freee会計の連続取引登録機能を使い、ファイルボックスに保存された領収書画像を見ながら記帳します。これにより、スキャナ保存されたデータとfreeeで処理した取引が紐づき、スキャナ保存完了です。

③ 現金払い以外の領収書・請求書について、freee会計上で既存取引と紐付ける

freee会計では、現金受け払い以外は、全て口座連携することをおすすめします。freeeと自動連携された銀行口座・クレジットカード等で受け払いをした場合は、freee会計の自動で経理機能を使って取引登録するでしょう。

ここで、freeeのファイルボックスに保存されたスキャナ保存データからさらに取引登録してしまうと、二重仕訳になってしまいますので、スキャナ保存データからは取引登録をしない点、注意が必要です。

この場合、ファイルボックスに保存されたスキャナ保存データが宙に浮いてしまいますので、自動で経理で処理された既存取引と、ファイルボックスに保存されたスキャナ保存データを紐づける作業を行っておくと、証憑から取引・そして試算表まで全て一気通貫で管理することができるようになります。

そういえばこの仕訳は何の費用だったか・・・と調べたい時は、仕訳に紐づいたデータをクリックすれば、すぐ確認することができます。

ただ、この既存取引との紐づけ作業が多少面倒ですので、どこまでやるかは、経営者の判断になると思います。

弊事務所では、freee会計の機能をフル活用して、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」全ての電帳法対応を実践しております。たとえば「スキャナ保存にも対応して、紙の領収書を廃棄したい」とお考えの経営者様に対して、私自身の経験をもとに具体的なアドバイスが可能です。お気軽にご相談ください。