自作の税理士事務所管理システムを、kintoneからNotionへ移行しました。
kintoneとNotionは、どちらもシステムを作るためのノーコード・ローコード開発プラットフォーム(私見)です。この記事では、これらのプラットフォームの特徴、長所、短所についてまとめています。
目次
はじめに
税理士事務所には、顧問先の様々な情報を効率的に管理するシステムが不可欠です。
Excel等のスプレッドシートで管理している税理士事務所も多いと思いますが、私は税理士事務所を開業するにあたって「システムエンジニアの経験を活かし業務改善を売りにする」と決めていたので、Excel管理はハナから念頭になく、
- 既成の有料サービス
- プラットフォームを契約して開発する
のいずれかにしようと考えていました。
システムエンジニアの間でよく言われるフレーズに「車輪の再発明をしてはいけない」というものがあります。
すでに存在するものをゼロから開発するのは労力の無駄である、という考え方ですが、個人的に、既にある車輪を使ってどのような車を組み立てるかはエンジニアの腕の見せ所、という意味でもあると思っています。
例えると、
- 既製品の自動車を買ってくる
- 車輪を買ってきて自分の好きな自動車を作る
のどちらか選べる時に、エンジニアは後者を選ぶ事が多いのだと思います。
私は一応C・C++での開発経験がありますが、税理士になった後までガリガリとコーディングする気がないので、ノーコード開発ができるプラットフォームで税理士事務所管理システムを作ろうと考え、選んだのがkintoneでした。
kintoneとNotionの共通点
両ツールともに、データベース機能を備え、カスタマイズすることで色々なニーズに対応することができます。
kintoneとNotionの相違点
kintoneはビジネスを効率化する事に向いたプラットフォームで、利用者にわかりやすいユーザインターフェースを作り込むことができます。
Notionはシンプルなユーザーインターフェースで、資料作成やデータ整理に向いているプラットフォームだと思います。
kintoneとNotion両方使いましたので、それぞれの特徴を私見で深堀りしてみたいと思います。
kintoneの特徴
kintoneは、プログラミング不要で業務アプリを作れるノーコード・ローコードツールです。サイボウズが提供し、多様な業務にあわせたシステムを自分で作ることができます。
様々なデータを格納できるデータベースが根底にあり、データ入力・データ取り出し・データ加工をグラフィカルなインターフェースで行うためのアプリを開発することができます。
開発作業自体も、ボタンやフォームをアプリ画面にドラッグ&ドロップするだけで行うことができ、
- 開発者にとっては、開発の容易さ(多少勉強すれば、コーディングができない人でも高度な開発が可能)
- 利用者にとっては、利用の容易さ(ボタンクリックやフォーム入力といったGUI操作中心のインターフェース)
が大きな特徴になっています。
ExcelにVisualBasicでボタンやフォームを作った事がある人であれば、あれをもっと簡単にしたものとイメージして頂ければと思います。
kintoneは日本中に多くのユーザがいて、サポートが充実しているのも大きな特徴です。
kintoneの料金
kintoneの料金は、下表の通りです。大きな料金改定(値上げ)があり、2024年10月分から改定後の料金となります。
ライトコースでは、外部サービス・プラグイン・APIと連携させることができないため、シンプルな業務管理を行いたい場合に選ぶことになります。
スタンダードコースでは、Javascriptを使用したり、外部サービスや有料プラグインと連携することで、大規模・複雑な業務に対応するカスタマイズが可能です。
改定前 | 改定後 | |
---|---|---|
ライトコース | 780円/1ユーザ月額 | 1,000円/1ユーザ月額 |
スタンダードコース | 1,500円/1ユーザ月額 | 1,800円/1ユーザ月額 |
最小契約ユーザー数 | 5ユーザ | 10ユーザ |
最小契約ユーザー数が決まっているため、たとえば、料金改定後のライトコースでは、1人で使っていても、最低でも月々10,000円かかることになります。
私はいままで月々3,900円(5ユーザ✕780円)の最小課金でライトコースを利用してきました。kintoneの機能を考えれば、これくらいの金額なら支払う価値は十分にある、と考えています。
kintone料金改定で離脱
kintoneは、料金改定により、月々10,000円が最小課金単位となります。
さすがに10,000円あれば、既成の税理士事務所向けシステムが利用できてしまうため、kintone上で税理士事務所管理システムを動かし続けるのを諦めました。
kintoneは、簡単にGUI開発ができるので、とても使いやすくいいプラットフォームだと思います。実際に自分自身で使用してみて、ノーコード開発のノリがわかったのも大きいです。いい勉強になりました。
さて、kintoneを使い続けるのを諦めましたが、税理士事務所管理システム自体は必要なので、同様のノーコード・ローコード開発プラットフォームを探していて、Notionを使うことにしました。
Notionの特徴
Notionもノーコード・ローコードツールです。プラットフォームというよりは、ワークスペースと言ったほうが良い表現かもしれません。
文書作成、データベース、タスク管理など、さまざまな機能があり、個人のメモから企業のプロジェクト管理まで幅広く利用されています。紙のノートにどんどん書き込んでいくノリでデータ入力・情報管理を行うことができるため、kintoneよりも気楽に使い始めることができます。
ただし、kintoneに比べてGUIがシンプルで、見た目の表現の自由度が低いです。
Notionの機能は、大きくノートとデータベースに分かれています。
ノートは、テキストや画像、リストなどのコンテンツをテキストエディタのように書き込んでいくことで、データを蓄積していくものです。WordPressのブロックエディタを使ったことがあれば、あれと似たようなものをイメージしていただけると良いと思います。
kintoneと違い、Notionのデータベースはexcelのシートに近いものをイメージしていただくと良いと思います。シートに行・列を追加して、色々なデータをセルに入力していくものです。データベースですので、ビューと呼ばれる複数の表示方法でデータを表示することができるのが特徴です。
ちなみに、このブログの原稿もNotionで書いています。
Notionの料金
Notionは、無料のプランで十分な機能を使用することができます。AIを使いたい場合や、5MBを超えるファイルを添付したい場合には有料プランを契約することになります。
私はAIはMicrosoftのCopilot pro(有料版)を使用しているため、Notion AIはいまのところ必要なく、Notionは無料プランで使用しています。
kintoneとNotion、どちらを選ぶ?
データベースを活用した情報管理システムを作りたいと思い立った時に、kintoneとNotionのどちらを使うと良いかについては、私見ですが、
- スモールスタートならNotion
- PC操作が苦手な人も使うのであればkintone
だと思っています。
ユーザが使いやすいアプリを作れるのはkintoneです。サポートもしっかりしています。
Notionは、基本的にテキストベースで、表現が限られているため(限られていることにより、シンプルな実装・操作を実現している)、PCにアレルギーのある人にはとっつきにくいかもしれません。また、ネット上の情報を調べたり本を読んだりして、自力で情報収集する必要があります。
最終的には、各組織のニーズと予算に応じてツールを選択する事になると思います。
Notionで参考にした本
税理士事務所管理システムをNotionへ移行するにあたり、Notionの本を数冊読みました。その中で、一番よかったのが次の本です。
ノースサンドさんの社員が書かれた本で、ノースサンドさんのNotionブログはいつも参考にさせて頂いています。
ノーコード・ローコード開発では、「こういうものが作れる」という情報さえあれば、あとはとりあえず色々いじってみて、どうやって実装されているかを把握して、ノリで開発できます。
私が現役プログラマーだった大昔のように、システムの仕様や開発マニュアルを用意して準備万端で開発に取り組まなくていいので、ノーコード開発で、開発の楽しさだけを味わっています(笑)
税理士事務所管理システム
kintoneでは、顧問先情報管理と業務記録簿を作り、それぞれ相互連携させていました。
今回、Notionで開発していて、楽しくてつい、顧問先管理、業務記録簿、タスク管理など、6種類以上の色々なシステムを作って連携させました。
いやぁ〜、ノーコード開発って、いいものですね。
弊事務所では、10年超のシステムエンジニア経験を活かし、顧問先向けサービスとしてクラウドサービスを中心に組み合わせたDX化支援をご提供しています。今の業務をカイゼンできないだろうか、とお考えのかたがいらっしゃいましたら、お気軽にご相談下さい。