アイキャッチ画像は、三宅島中央にある雄山です。
三宅島では、噴火に伴う火山性ガスの発生により、木々が枯死し、草が生え、低木が育ち、島の植生が徐々に回復していく様子を感じることができました。自然は凄いな、と思いました。
2024/4/18〜4/21の日程で、三宅島へ税務支援に行ってきました。
今回の三宅島訪島は、個人的に
- 島の皆様の税務相談
- 三宅島の一部を測量し、DG-PRO・LiDARで土地・建物の座標付き立体データを取得する
- 2000年の噴火から20年が過ぎ、どのような状況になっているのか確認する
を目的としていました。
東大が設置した御影石の水準点を発見したり、DG-PROを触ってみたり、LiDARで計測したり、色々と勉強になりました。
目次
NPO法人 司法過疎サポートネットワーク
NPO法人 司法過疎サポートネットワークでは、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士等の士業がタッグを組んで、東京島嶼部を中心とした過疎地の法律・税務等の支援を行っています。
乗り慣れた橘丸で三宅島へ
竹芝桟橋から三宅島へ
内地から三宅島に行くには、
- 調布飛行場から小型飛行機
- 竹芝桟橋から東海汽船の大型客船
の2通りの行き方があります。
私は船旅が好きなので、船一択です。
乗り慣れた橘丸で、22:30竹芝桟橋発、05:00三宅島着の夜行便を使いました。
三宅島は、大型客船が寄港できる港が3箇所(井ケ谷港・三池港・錆ヶ浜港)あり、当日の海の状況により、どの港に接岸するかが決まります。3箇所あれば、天候が悪くても一番コンディションの良い港を選ぶことができるため、上陸できる可能性が高いです。
以前、八丈島に行こうとした際に、悪天候で港に着岸できず、そのまま竹芝桟橋に引き返したという苦い思い出があります。三宅島なら、そういう事は滅多に無いと思います。
三宅島から竹芝桟橋へ
また、三宅島から東京に向かう帰りの船の港も、当日11:00に決まるため、どの港に行けば帰れるのか、東海汽船のHPとニラメッコすることになります。
今回の出港場所は、「めったに使われない」と言われている井ケ谷港だったため、近くに土産物屋も無く、竹芝桟橋に着いてからお土産を買いました(笑)
スターリンクがある!
橘丸は、いまスターリンクの実験をしていて、船内の一部でネットが繋がります。
スターリンクが繋がる所には、電源コンセントがないので、長時間仕事をすることは難しいです。
スターリンクの回線速度はこんな感じです。
VPNを噛ませると、もう少し遅くなりますが、十分仕事ができる速度だと感じました。
上りが遅いのが衛星回線っぽいですね。
三宅島の特徴
三宅島は、定期的に噴火災害が発生する土地柄のためなのか、未登記建物や所有者不明土地が非常に多い事が特徴です。また、土地の境界(筆界)も正確ではなく、資格を持たない人が、人海戦術かつ不十分な精度で測量したと思われる所が数多く見受けられます。
測地系の変更にも大きな影響を受けています。明治時代に採用された日本測地系での測量データと現在使われている世界測地系のズレが大きく、旧測地系でのデータを無理矢理当てはめているため、本当の土地の境界が一体どこなのか、曖昧になってしまったようです。
たとえば、この細長い土地。
おそらく、共有で使用していた土地を、国土調査の際にエイヤ!で人数分割したのではないかと思います。
いま、日本全体で未登記家屋の老朽化や所有者不明土地が問題となっています。三宅島は特にその巣窟となっていて、しかも解決する手立て・計画がほとんど無いまま放置されている状態です。
三宅島を通して、日本の国土の問題が見えてくるように思います。
三宅島唯一の元・土地家屋調査士のかたにお話を伺いました
今回、今も三宅島に住んでおられる、国土調査当時の状況を知る唯一の元土地家屋調査士のかたのお宅を訪問し、お話を伺うことができました。
ここに書いて良いものか(私には)判断がつかない、興味深い話を色々と聞くことができ、三宅島の問題についてより理解を深めることができました。
日本全国で起きている、所有者不明土地問題
所有者不明土地は、様々な問題を引き起こします。
- 管理できず荒れ地になってしまい、防災対策ができない
- 災害復旧のための用地買収が困難
- 固定資産税の課税ができない
- 売却しようにも自分の土地の境界がわからない
これに対し、国も重い腰を上げ、
- 相続登記申請の義務化
- 相続土地の国庫帰属制度
などの制度を作り、「今後発生する」未登記家屋・所有者不明土地を無くすための第一歩を踏み出しました。
しかし、「既に発生している」未登記家屋・所有者不明土地については、どうすればよいのか、国にもまだ具体案が無いのが現状だと思われます。
相続登記の申請の義務化
前述の通り、日本では、所有者不明土地が深刻な問題となっています。今後の所有者不明土地の発生を防ぐ目的で、令和6年4月から相続登記の申請が義務化されました。ニュースで取り上げられたので、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。
相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
相続国庫帰属制度
所有者不明土地の発生を予防し、管理されない土地が放置されることを防ぐため、令和5年から、新たに相続土地の国庫帰属制度が作られました。
相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したい場合、土地を国に帰属させ、土地の再利用を促進するための制度になります。
しかし、この国庫帰属制度は、土地の境界が未確定だったり、所有者が曖昧だったり、共同所有者の合意が得られなかったりした場合には、申請しても却下されてしまいます。
三宅島には、まさに「土地の境界が曖昧で、所有者も曖昧で、所有者がどこに居るのか追跡も難しい」という、国庫帰属制度が適用できない土地が数多く存在します。
三宅島の土地問題をどうすればよいのかを考える事が、日本の国土問題を解決することに繋がっていくのではないかと考えています。
三宅島のケース
三宅島は20年程度おきに定期的に噴火している火山島であり、次に噴火する時は、カルデラからの破局噴火ともいわれています。
防災の面でも、2000年の噴火後に作られた防砂ダムが、砂礫で埋まり、機能を果たさなくなってきている様子も見受けられ、「土地の所有者が不明なので防災工事ができない」という状況をこのまま放置するわけにはいかないと思います。
三宅島は、今そこにある災害危機と、登記問題が直結している島と言えます。
下の写真は、七島展望台手前にある大規模な防砂ダムです。写真中央にコンクリートでできたダムの上辺が見えています。防砂ダムが砂礫でほとんど埋まってしまい、機能を果たさなくなっているのがわかります。
次の噴火に備えるために
2000年噴火の際には、最後の避難バスが集落を出発した10分後に溶岩が集落を襲ったという話もあります。ギリギリのタイミングで避難することができたわけですが、その時から既に20年以上経っています。
当時は自力で歩いて避難ができた島民も高齢者となり、2000年噴火の際と同じスピードで避難ができるとは思えません。
従前から定期的に、全200ページからなる「三宅島火山避難計画」が作成・更新されていますが、島のかたに聞いた所、その存在自体を知りませんでした。
そもそも一般の島民のかたが読む資料では無いと思いますし、噴火が起きる前に、
- 高齢化が進む島民の皆様を、災害時にどう避難させるのか
- 島民の皆様に、避難状況をどうわかりやすく伝えるのか
を、役所目線ではなく、島民目線で考える必要があるのではないかと思います。
各家庭に配られているIP端末など既存インフラを活用し、ITを駆使して解決していく事が一つの案なのかな、と考えています。
士業として何ができるのか、考えていきたいと思います。
三宅島測量など
今回の三宅島訪島では、自由時間はDrogger GPSによる測量や点群データの取得を行っていて、観光をする時間があまりありませんでしたが、写真を乗っけておきます。
噴火の凄さを感じます
溶岩に襲われた小学校跡地
トトロがいそうな森もありました
島の噴火を何度も見てきたと思われる大樹
スーパーtsuchiyaで飾ってあったケッテンクラート。店主さんはわかっていらっしゃる。
ここの海苔弁当は美味しかった!
噴火により堆積したスコリアでできた地層がよくわかります。
また来ます、三宅島。